2007年7月28日土曜日

サイバージャーナリズム論

歌川令三 湯川鶴章 佐々木俊尚 森健 スポンタ中村 著

ソフトバンク新書044

新聞などの既存のマスメディアが今後どうなっていくか?
ジャーナリストの定義は?
サイバー時代の新しいジャーナリストの姿は?その役割は?
というような疑問に対してそれぞれの著者が、
実情を語り、また自らの意見を述べています。

最終章での、歌川氏と公文俊平氏との対談の中で、
公文氏が、これからは「知民」の時代だと断言されていることに
共感を覚えます。

「知民」ジャーナリストはお金にならず、
職業としてのジャーナリストは成立しなくなるという示唆も
確信をついているものと感じます。

公文氏の意見では、
今後、知の共同体においては、お布施の経済学が主流になるとのことです。

ネット上での情報のやり取りの今後を考えていく上で示唆に富む一冊です。

地盤が壊れることは想定外?

耐震設計というものがなされるときには、
基本的には地震によって地面が前後左右にゆれる際に、
建物自身がその揺れについていけない中で、
建物を水平に揺らす力が働くことに着目します。

その水平力に抵抗できるような強さや固さを持つ建物を
設計すること目指します。
どれほどの力に対して、
どれぐらいの抵抗できるようにするか?ということは、
設計の方針しだいで、いろいろな進め方があります。

しかし、
いずれにしても、
建物が地盤の上に乗っかっていることが前提で、
建物が建つ地盤そのものが破壊してしまうことを想定していません。

そのため、
原子力発電所であろうがなんであろうが、
直下の地盤が大きくずれたり崩壊した場合の被害は、
想定外のものとされてしまいます。
逆に、
そういう事態でも壊れないものをつくれというような要求も
現実的なものであるとは思えません。

静岡県内でも、
第2東名高速道路の工事が、
結局、
着々と進んでいます。
建設理由の一つに、大地震の際に
現在の東名高速道路が通行不能になったときの
バイパスとしての機能を果たすといわれたりもしています。

断層を横切る第2東名が、
大地震の際に無事であるとは、
到底思えません。

2007年7月27日金曜日

絶対に安全なんていうことは絶対ない

原子力発電所の耐震性について報道がなされていますが、
そもそも絶対に安全であるなどという基準でものはつくれません。

基準となるラインが設定され、
そのラインを上回っている確認をするだけです。
どういう設定をするかという方法は一つではないので、
設定の仕方によって、大丈夫だとみなしたり、駄目だと判断したり、
判定結果も異なったりします。

絶対安全だとか、絶対の安全を求めるとか、
ありもしないことを前提にすると、
現実の対応ができない状態になります。

非常に大きな地震の震動に見舞われたときに、
既存の原子力発電所にどういうことが起こるかということを、
きっちり予想できているなどと信じるべきではありません。
そういうリスクを背負った基盤の上で、
今の生活が成り立っていることは、ゆるぎない事実です。

2007年7月25日水曜日

データはウソをつく

谷岡一郎 著  ちくまプリマー新書059

ぜひベストセラーになって、
できるだけ多くの人にこの本を読んでもらいたい。
そう思える本です。
新聞報道、あやしげな占い師、著名人のコメントなど、
ついつい信じてしまう人の多い数々のウソについて、
それを見破るための考え方が明確に示されています。

みんな、できるだけものを考えて生きようよ。という
メッセージがこめられているように思えます。

随所に紹介されている
いしいひさいち氏の4コマ漫画にも
感心させられます。

コーヒーの量と心臓の健康度について
調査する例題については、
具体的な方法を丁寧に紹介しつつ、
結局のところ、いろいろ考えるべきことがある
ということが鮮やかに書かれています。

中高生にも読める体裁の本ですが、
大人、そして研究者と称する人も
ぜひ読んでおきたい一冊です。

一人でも多くの人がこういう本を読んで、
考えるということに
前向きになってもらいたいと思います。

2007年7月24日火曜日

そっと待っている

物理学者、ゴミと闘う

広瀬立成 著  講談社現代新書1887

レジのゴミ袋の節約は
石油の消費を抑えることに大いにつながるということ、
ペットボトルは
リサイクルされているから良いというようなものではないこと、
原子力のエネルギーに頼ることの是非についてなど、
環境の問題について考えるための材料を
数多く提供してくれています。

著者自ら、
町田市ごみゼロ市民会議の代表となっていらっしゃるそうです。
物理学の基本的な考え方を踏まえながら、
実践的な話が展開されています。

リサイクルしているから良いのだというような
間違った考えに陥らないためにも、
環境問題やごみのことについて
しっかり考えるためにも、
ぜひ読んでおきたい一冊です。

この本で述べられているような環境問題は、
これからの社会のあり方を考える上での
とても重要な問題なのですが、
今回の参議院選挙でも
大きな争点とならないということこそが、
実に大きな問題です。

2007年7月22日日曜日

なぜ勉強させるのか?

諏訪哲二 著  光文社新書291

著者は「プロ教師の会」の代表です。
「サブタイトルに教育再生を根本から考える」と掲げられていますが、
その根本にあるものとして、
個人が社会で生きるということついての考察がなされている上で、
教育についてのさまざまな事柄について述べられています。

ゆとり教育、親力、百マス計算など、
教育について考えるときに登場する最近のキーワードについても、
深く考えるための素材を得ることができます。

知識を得るということに根ざす学力というものだけに
重きをおくべきではないという主張がなされています。

まったくの同感です。

本文中で紹介されている教育学者の広田照幸氏の発言に中にある
「「わが子だけ」でなく世の中のすべての子供の未来に意識を向けてもらいたいものだ。」
という言葉にも、大いに共感できます。

教育について、また学校について考えようとする時には、ぜひ読んでおきたい一冊です。

2007年7月14日土曜日

考えるシート

山田ズーニー 著  講談社

数年前に出された本ですが、実に良くできています。

たとえば、
「おわび」を考えるシートというものがあります。
空白を埋めていくと、
相手のことを思いやったお詫びの文をつくることができます。
空白を埋めるといっても、穴埋めということではなく、
要所を押さえた構成の基本が示されているというものです。
自己紹介文から議事録まで、いろいろな文章の構成が、
実にほんわかした雰囲気で表現されています。

ものを考えるということ、文章を書くということ、
そういった力を磨くためのヒントを与えてくれる一冊です。

2007年7月9日月曜日

やわらか戦車流 Web2.0発エンタメ・ビジネス戦記

やわらか戦車連合軍 著・編  講談社

やわらか戦車という
ネット上で公開されているアニメが
売り出されるまでの過程が、
関係者へのインタビューなどをつづる中で
明らかにされています。

サブタイトルにWeb2.0発とあるように、
いきなりマスメディアを通じて
大々的に宣伝したわけでもなく、
うわさがうわさを呼ぶような状態で、
サーバへのアクセス数が急上昇していきます。

ファンワークスという会社を
お二人で始められたようですが、
その内のお一人の服部氏の言葉、
「また会社を作って思ったのは、
準備に時間をかけるのは無駄だということです。
まず始めてみるのが大事で、
あとはそのときどきに応じて、
必要となったものをやればいい。」
というのはとても印象に残りました。

連合軍という名称で、
複数の会社などのメンバーが
集まって話し合いがなされる中で、
ことが進んできたようですが、
参加者一同の中に、
おもしろいことをやろうという
共通意識があったことが
強く感じられます。

面白いことをやりたい。
プロデュースの過程を見てみたい。
Web2.0の実際を見てみたい。
と思う方にはお勧めの一冊です。

2007年7月2日月曜日

ヒトはなぜヒトをいじめるのか

正高信男 著  講談社ブルーバックスB-1556

人間以外の動物の世界では、いじめは存在しないそうです。
どうしていじめが起こるのかということについて、
実に冷静かつ的確に考察されています。
特に、傍観者の役割についての分析は、いじめがおこる確信を突いています。
社会のあり方や、子供中心主義の家庭のあり方についての問題提起もなされていて、
いじめについて考ようとする場合には、ぜひ読んでおきたい一冊です。

「一人力を養う。」ということに尽きる。と最後は締めくくられています。

記憶の「9マス英単語」

晴山陽一 著  文春新書577

3×3の9マスの真ん中にテーマが書かれていて、
その周りの8つのマスに日本語が書かれています。
その日本語を意味する英単語をクイズを解く気分で、
考えて英単語を覚えるという内容です。

挑戦するのはこれからですが、とても面白そうです。

プロローグに、テストもクイズも本来あまり意味は違わないのに、
テストは嫌われ、クイズは好かれる。そこで何とかテストを
クイズ化してみたというコンセプトが何よりも素敵です。

英単語の語彙を増やしたい人にはお勧めの一冊です。