阪神の地震から15年経つということで特集番組が放映されたり、
番組中のコーナーで特集して取り上げられている。
ハイチの地震の被害もかなり大きく、
建物の耐震性を無視できないことは
誰の目にも明らかだ。
誰しもが、耐震性能の技術について考える必要がある。
しかし、耐震性能の技術は、そう分かりやすいというものでもないので、
単純に分かったかのような説明は、努めて避けるべきである。
建物の耐震性についてテレビ番組で取り上げられる際に、
伝統的な木造建築物が柔構造で、とても良く考えられて建てられているとか、
その技術を活かしたものとして、エネルギーを吸収する最新技術があると、
さも分かりやすいことのであるかのように、
いいかげんな形で紹介されていることがある。
16日土曜日の朝の番組でも、かなりいいかげんな取り上げ方がされていた。
コメンテーターなる人たちの話も、分かっていないなら分からないと言えば良いのに、
知ったかぶりをして、適当なコメントをしてしまっている。
(分かっていると思い込んでいそうな感じに、私自身、唖然としてしまった。)
そういったいいかげんな話は、もう、いいかげんになくしてもらいたい!
そいうったいいかげんな話を、なくすことができない自分自身に、
大いなるふがいなさを感じ、自分自身に腹が立ってしまう。
ほとんど読まれることのないブログに書いているだけでは解決につながらないけれど、
いいかげんな話をなくすために、少し書いておくことにする。
伝統的な建築物が柔構造でエネルギーを吸収できる仕組みを持ち、
そのことを考慮して建てられてきた。
などという、さももっともらしく、分かりやすい説明を素直に受け入れて、
分かった気になってはいけない。
伝統的な建築物が地震の揺れに伴って、どのような力が加わり、どのように変形するのかということは、柔構造だから良いのだなどという単純な話だけでは説明できない。
変形することによりエネルギーを吸収できる仕組みを
最新の技術として紹介しているが、
その効果を測ることも、実は簡単には行えない。
実験をして、コンピュータで計算をして確かめたと言っていても、
それは、ある条件のもとで確認したものにすぎない。
大きな変形を生じた時にエネルギーを吸収するという仕組は、
大きな変形を生じなければ、その役割を果たすことはできない。
そもそも大きな変形を生じないようにする設計の考え方や設計の方法がある。
地震に対してどのように変形するのか、緻密に把握できない中で、
大きな変形が生じることを前提に設計するよりも、
変形を抑えた設計をする方が、考え方とすれば素直である。
五重塔が地震で倒れないことについて、
大きな変形に対して心柱が効果を発揮することもある。
大きな変形に対処する仕組が優れた耐震性能を持つことにつながっていることはある。
そのことを私自身、心柱閂説の提唱者である師匠から直接教わった。
だから、私自信、大変形を考慮した設計を行いうるだろうことは認める。
でも、話は決して単純ではない!
伝統的な建築物は、柳に風のようにしなやかで、エネルギーを吸収する。
などという単純な理解で片付くものではない。
ダンパーと呼ばれるエネルギーを吸収するものをつければ良いというような
安直な話で収まるものでもない。
分かりやすい話を、分かりやすいからといって受け入れてはならない!
私自身、
改めて、ちょっと冷静になって、
伝統的な建築物の耐震性についての怪しげな言説を消去するための
取り組みの構想を本気で練ることにしようと思う。
それにしても、
自分自身が知っていることについて、取り上げられていたので、
番組で伝えられていることが間違った印象を与えるものだと気づいたものの、
自分自身が知らないことについては、
同様に分かりやすさが先で、本質を見誤るような情報が多く流れているような気がして、
テレビの情報番組なるもので情報を得ることへの恐ろしさを感じてしまった。
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